“改悪”された?! マレーシアの長期滞在ビザ「MM2H」の条件や申請・取得方法の新旧比較

マレーシアコラム

東南アジアの国の中でも、ロングステイ財団(東京都千代田区)が2019年に発表した「ロングステイに関する意識調査」で、日本人が移住や長期滞在を希望する国・地域として14年連続1位となったことでも話題のマレーシア。2020年8月から新型コロナウィルスの影響により凍結されていたマレーシアにおける長期滞在ビザ「MM2H」の取得申請が2021年10月より再開されました。再開後の申請内容が改悪されたと話題になっていますが、どのような変更点があったのか、旧制度と比較しながらみてみましょう。

改悪されたと言われているMM2Hとは?

「MM2H(Malaysia My Second Home)」とは、マレーシア政府が外国籍の人に対して推進している長期滞在ビザのことで、取得すれば更新なしで5年間マレーシアに滞在することができます。
また、配偶者と21歳未満の未婚の子供、60歳以上の両親といった家族も一定の条件を満たせば同行することが可能です。

では、なぜこのMM2Hが改悪されたと言われているか、旧申請条件と比較してみましょう。

MM2H 基本条件に関する新旧条件比較

  新制度 旧制度
有効期間 5年
※申請条件を満たす限り5年ごとに延長可能
10年
ビザ発給費 RM500/年(約13,000円) RM90/年(約2,300円)
手続き費用 申請者RM5,000(約130,000円)
帯同者RM2,500(約65,000円)
なし
人数の制限 マレーシア総人口の1%を超えない なし

参照:在マレーシア日本国大使館HP

旧制度では、更新なしで10年間の長期滞在が可能でしたが、新制度になって5年ごとに更新すれば延長できるものの、最初の有効期間は5年間となっています。また、無料だった取得手続きに関する費用が有料になっているのも大きなポイントです。

MM2H 収入・金融資産の条件に関する新旧条件比較

  新制度 旧制度
マレーシア国外の月収 RM4万以上(約100万円) RM1万以上(約26万円)
定期預金 RM100万以上(約2,600万円)
※申請者の配偶者、子供、親、義理の親である
被扶養者は1人につきRM5万が加算
50歳以上:RM15万(約390万円)
50歳未満:RM30万(約780万円)
定期預金の引き出し 不動産取得、医療、教育目的で、
最大50%の引き出しが可能
※申請者の配偶者、子供、親、義理の親である
被扶養者も不動産取得、医療、教育目的で、
最大50%の引き出しが可能
50歳以上:RM15万(約390万円)
50歳未満:RM30万(約780万円)
流動資産 RM150万以上(約3,900万円) カテゴリーに応じて
RM35万円(約910万円)
および
RM50万円(約1,300万円)

参照:在マレーシア日本国大使館HP

申請再開後の新たな条件は、申請休止以前の条件と比較すると、厳しくなっていることが分かります。例えばマレーシア国外の月収を見ると、旧制度の約4倍、定期預金額は旧制度の6倍以上となっています。

MM2Hの取得者合計数世界2位を誇る日本

MM2Hの取得者数は、ビザ制度が開始された2002年から増加傾向です。

2002年に800人程度だったMM2Hの取得者数は2017年には6,000人を超えるまでに増加しました。中でも日本人の取得者が非常に多く、2018年時点での国別取得者の合計は中国に次いで第2位となります。さらに、全世界での取得者の合計は40,000人を超えました。

図:国別年間MM2H取得者数

出典:グローバルプロパティ株式会社HP

MM2Hを取得する6つのメリット

マレーシアは「物価の安さ」「治安の良さ・暮らしやすさ」とともに「MM2H取得による移住のしやすさ」も移住したい国ナンバーワンとなっている理由の一つです。

さらに、MM2Hには長期滞在ビザの中でも魅力的なメリットが多く、特に年齢を重ねても申請・活用しやすいことが特徴です。そこで、MM2Hを取得した場合のメリットを6つご紹介します。

税金対策に有利

マレーシアの税制は外国人に有利な税率となっており、日本で住民税を払うよりも税金を抑えられるのがメリットです。

収入源がマレーシアであれば、所得税も抑えられます。物価が安い中で税金も抑えられるので、日本にいるよりも少ないコストで生活水準を上げることができます。他にもマレーシアには相続税がないことから、富裕層のマレーシア移住も増えています。

ビジネス歴、語学力に関わらず申請できる

多くの先進国では長期滞在ビザの申請条件に、宗教・語学力・現地のビジネス歴などの制限を設けていまするケースも多いのですが、マレーシアのMM2Hは主に財産・収入証明のみで大きなこういった制限はありません。

年配の方や年齢を重ねた資産家や、ビジネスを勇退して第二の人生を充実させたいと考えるるご夫婦の移住先として人気が高いのは、MM2Hの申請に年齢や語学力の制限がない点が挙げられます。

住宅購入ができてローン融資の条件も良い

MM2Hを取得することで、マレーシア内に住宅を購入することができます。他のアジア諸国では国籍を有しない外国人が、住宅ローンを組んだり、土地付住宅の所有権を持てる国は例がなく、マレーシア移住の大きなメリットです。

国内よりも利率の有利なマレーシアの銀行口座が持てる

年間の利率が3%以上と言われるマレーシアの銀行口座を持つことができます。利子のメリットが少ない日本の銀行に貯蓄するよりも、資産活用を行う際は有益性が高いと言えます。

さらに、MM2Hの取得自体を「信用」とみなされて、住宅ローンの融資限度額などで有利に働くことも多いようです。また、マレーシアの土地や住宅の価格は日本よりも安いため、ジムやプール付きのハイグレードな邸宅を持つことも夢ではありません。

家族も同行できる

MM2Hを取得すると、家族が同行できるのも大きなメリットです。諸条件はありますが、配偶者はもちろん、21歳未満の未婚の子供、60歳以上のご両親も連れて行けるのが特徴です。

子供たちをマレーシアの学校に通わせて国際感覚を養わせることもできますし、親孝行としてご両親に老後の快適な生活をプレゼントすることもできます。

条件付きで現地就労もできる

MM2Hではマレーシア企業への投資はできますが、自ら起業すること、企業の役員になったり勤務することは原則認められていません。しかし、50歳以上で専門職を有する場合は、週20時間以内のパートタイムジョブは可能です。

MM2Hの申請方法や取得方法は?

MM2Hを取得する方法としては、ご自身で取得する方法の他に代行業者を利用して取得することが可能です。代行業者を利用する場合は、手数料が15万円~20万円程度かかりますが、マレーシアを熟知しているプロが行ってくれるため、移住後の生活に関する情報などを聞くこともできるのがメリットです。委託をする際は、マレーシア政府から認可を受けた業者であることを必ず確認しましょう。ここからは個人でMM2Hを取得する場合の手順を5つのSTEPでご紹介します。

STEP1. 必要書類を用意してMM2Hセンターへ提出

提出書類は申請書や写真や申請理由を英語の手紙形式で書くカバーレター、その他の証明書が13種類必要となります。英語での書類作成に慣れていない方にとっては、労力のかかる作業になりそうです。

MM2Hの取得に必要な書類

No. 必要書類 枚数 ポイント
1 カバーレター 1 ビザの申請理由を記載。
2 MM2H申請用紙 1 ※書類のダウンロードが必要。自筆で記載。
3 代表者の経歴書 1 学歴、職歴などの記載。
4 IM12フォーム 3 ※書類のダウンロードが必要。原本1枚・コピー2枚。
5 パスポートのコピー 1 全ページのコピーが必要。
6 パスポートの顔写真 4 パスポート用サイズの写真を準備。
7 結婚証明書 1 配偶者が同行する場合のみ必要。
8 健康自己申告書 1 ※書類のダウンロードが必要。
9 出生証明書 1 21歳未満の子供が同行する場合のみ必要。
10 財務書類の開示承諾書 1 ※書類のダウンロードが必要。
11 無犯罪証明書 1 県警察へMM2H申請書を持参し証明をもらう。
12 在籍確認承諾書 1 ※書類のダウンロードが必要。
13 財務関連書類 1 直近3ヵ月分の預金証明書
14 チェックリスト(Appendix) 1 ※書類のダウンロードが必要。

出典:マレーシア政府観光局

STEP2. 仮承認書の発行

審査を通過した申請者には、MM2Hセンター内移民局より、仮承認書が発行されます。書類提出後、約4か月程度で発行されるのが一般的です。

STEP3.仮承認書発行から6か月以内にマレーシア国内で各種手続き

マレーシア現地で銀行口座の開設や医療保険の加入、健康診断などを行います。

STEP4. MM2Hセンター内移民局出張所にて書類提出

マレーシアの現地金融機関による証明書や健康診断書、医療保険証明書などの書類をMM2Hセンター内移民局出張所にて提出します。

STEP5. MM2H取得

英語での書類作成に慣れている方は個人取得でも問題ありませんが、そうでない場合はマレーシアの現地事情にも詳しい代行業者に依頼することが一般的です。

今回は新型コロナウイルスによるMM2Hの取得申請休止前と取得申請再開後で条件を比較し、ご紹介しました。取得申請再開後にMM2Hの取得条件が更新されたことにより、取得に対するハードルが上がったように感じます。

とはいえ、ハワイなどの他の国と比較すると申請がスムーズで、暮らしのメリットが多くあるマレーシアに長期滞在できるMM2Hは引き続き需要があるビザだと言えるでしょう。

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